泣かないで!

優はテーブルに肩肘ついて頬杖つくと

何を考えるわけでもなく
一樹の様子を伺っていた

正直訳がわからない。

今朝までは、なんの変わりもない日常だった

食う

ゲーム

寝る

昨日の繰り返しが今日
今日の繰り返しが明日

同じ事を繰り返す毎日がこれからずっと続いていくと思っていた

いや、はずだったのに

気づけば数分で
シングルファザーの出来上がり。

インスタントラーメンもびっくりな早さ
びっくりな展開だ。


もしかしたら夢かもしれない。

そんな風に考え
あいてる手で頬を抓ってみる。

「…だよな……」

痛かった。

期待を込め手加減抜きで抓ったから
結構痛い。

夢であって欲しかったな。

そう落胆していれば
一樹がリモコンの端を口に運ぶのが視界に写った 。

リモコンに涎が垂れる。

明らかに口よりでかいリモコンを入れようとしてる一樹。

優は手を伸ばしリモコンを取り上げた。

「汚ないな、こんなもん口にいれるなんて
不衛生だろ」

しかもボタン、ベタベタじゃないか

そんな事をぶつくさ呟きながら
ティッシュを取るとリモコンを拭いた。

チラリと一樹をみれば
瞳が揺れ
口がヒクヒクと動いている。

嫌な予感がした。


その直後
小さい身体からは
想像できないほどの泣き声が
狭い部屋に響き渡った。


「うわっ、なんだよ!?」

耳を塞ぎたくなる程の音量。

そして脳天を突き破るような高音。

優は瞬時にリモコンを一樹に返した。

「悪かった、悪かったから。」

しかし完全にご機嫌斜めな一樹は
小さい手でリモコンを叩く

挙句、ねっころがりばたばた暴れだした。

「えー?勘弁してくれよ」

優は頭を掻き溜息をつくと
暴れる小さい主の近くに移動し屈んで

「ごめん、ごめんな。
な?泣き止め、泣き止んでよ」

この状態に
優まで泣けてきそうだ

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