透明な願い



「あっ、梨音たらまた読書?」



図書室を出てすぐに、親友の亜樹に声をかけられた。


「い…いいでしょ、本好きなんだもん」



小さく頬を赤らめながら戸惑うあたしに、追い討ちをかけるように亜樹が笑顔で言った。



「嘘、圭吾の事待ってたくせに」



“圭吾”



その単語にあたしの体がビクッと反応する。



「ち…違うもん」



そう答えたあたしの顔を見て、亜樹は“ふーん”と言いながら小さく笑う。



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