透明な願い


「あっ…」

「?」



驚きと緊張で、言葉がつまる。



…やべぇ、今めっちゃ上がってる。



いつまでも言葉を発することのない俺を気遣って、彼女は優しく笑った。



「全部じゃないけど、大体なら本の場所ならわかるから。何かあったら声かけてくれていいから」



彼女は俺の近くにあった目的の物であろう本を手にとると、“それじゃあ”と言って窓際の席に腰を掛けた。



きっと…



ううん、きっとじゃない。


彼女は俺が困ってると思って、声をかけてくれたんだ。



なのに、気なんて使わせて…。




…ー冗談じゃない。



俺は拳をギュッと握って彼女の元に駆け寄る。



俺を見て驚いている彼女を見つめながら、荒い息を整えて言った。



「面白い小説とか、ある?」




嫌なんだ。



このまま、チャンスを棒に振るなんて。



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