透明な願い


恋の経験なんてなくて、こういう時どうすればいいのか分かんなくなるんだ。



うまい忘れ方を、まだ知らないー…。



「…あっ」
 

思い出したように、鞄をあさる。


けれど、お目当てのモノは一向に姿を見せない。




やだ、置いて来ちゃったんだ。




「あたし、今日読もうと思ってた本学校に置いて来ちゃったみたい。取りに戻るね」


「えっ、俺も行くよ」



圭吾の言葉に、あたしは大きく首を振った。



「大丈夫。そんなに遠くないし、あたしか弱くはないから」

「何言ってんだ…」



あたしの軽い冗談に、圭吾が優しく笑う。



圭吾、ありがとう。


あたしなんかの為に、悲しい顔をさせてごめんね。




「んじゃ、また明日学校で」




お願い、笑って?




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