透明な願い
「梨…音?」
後ろから呼び止められた声に、心臓がビクンと跳ねた。
間違えるはずがない。
いつだってあたしを捕らえて離さない、愛しい人の声を。
「櫂智」
振り向くと、少し心配した表情を浮かべた櫂智が立っていた。
「どうしたんだ?こんなところで…」
優しく、あたしを心配する櫂智。
どんなにあたしが酷いことを言っても、冷たい態度をとっても
いつだってあたしを思ってくれる。
大切にしてくれる。
そんな価値、あたしにはないのにー…
「あっ…と、なんでもないの。ただちょっと忘れ物しただけだから」
あたしは両手を左右に振った。