透明な願い


「忘れ物って、なんなの?」

「…本。ー…図書室で借りた本をロッカーに忘れちゃったの」

「本?」



櫂智の声にビクッと反応する。



「あっ…本なんか明日でもいいか。わざわざ取りに来て、何やってんだろ」



“ねっ”なんて言いながら笑った。



恥ずかし。



どこまで大切な本なの?って感じじゃん。



「あははっ、あたしってどこまで本ばかなんだろね」



無理して笑うあたしの体がフワッと浮いた。



「!!」



あたしを櫂智が軽々しく持ち上げたのだ。




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