透明な願い


けど、もう会う事も話す事もないだろう。



“忘れよ、忘れよ”なんて言いながら、あたしは大好きな本を抱えて家路についた。




あれから数日、彼とは一回も会う事はなかった。



そんなとある日。



「ゴホッ、ゴホッ!!…」

「梨音、風邪?」

「そう…かも…ゴホゴホッ…」



咳が酷いのを心配して、友達が保健室へと連れてってくれた。



「もう、無理なんてしてないで調子が悪いなら休みなよ」

「うっ…ごもっとも」



お叱りの言葉でシュンとしているあたしを見て、亜樹がクスッと笑った。



「放課後迎えにくるから、おとなしく寝てなさいよ」

「うん」



“なら、よろしい”と言い、小さく手をヒラヒラさせて亜樹は保健室を後にした。




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