透明な願い



“なんでだよー”とブーブー言う櫂智に、あたしはペロッと舌を出して言った。


「悔しいなら、可愛いらしい態度しなさいよ」



あたしの少しキツい言葉に、櫂智がシーンと黙り込む。



「か…櫂智?」



言い過ぎたと思い、謝ろうと櫂智の顔を覗き込む。



表情を見るまであと少しの所で、櫂智があたしの両腕をガシッと掴んだ。



とっさのことであたしは目を丸くした。



「か…」

「嫌だ」



名前を呼ぼうとした時、櫂智の声が上手い具合に重なった。



< 5 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop