透明な願い
慌てて腕を払い、櫂智から離れた。
あたしが動揺しているのを見て楽しんでるかのように、櫂智がまたクスッと笑った。
「ちょっ…何考えてるのよ」
キッと櫂智を睨みながら言った。
その言葉に、櫂智は少し悲しそうな笑顔を浮かべて言った。
「…俺は、可愛くなんてなりたくないよ」
予想外の櫂智の反応に、あたしの心まで悲しくなった。
「も…もう、意味解んないし」
あたしはそれを必死に隠すために、今言える精一杯の言葉を発してその場を後にした。
梨音の背中を見送りながら、櫂智は髪をクシャッとさせた。
「…なぁ、亜樹」
「ん?」
「俺はさ、いつになれば梨音の1番になれっかな」
「櫂智…」
静かな廊下で、櫂智の声が小さく響いた。