Garden2
サイレントナイト
メリークリスマス。
呟いた声は、白い息になって。
空に吸い込まれた。
一年に一度だけ、あなたに近づく日。
清らかな夜だから。
聖なる夜だから。
この祈りも届くと信じたいから。
ひっそりとした礼拝堂に跪き、祈りを捧げる。
古くなったフローリングの床は、動いたわけでもないのに、ひとりでにミシミシと音を立てる。
あなたが、近くに来てくれている証のような気になって。
僕は瞳を閉じた。
メリークリスマス。
今年もこの日がやってきたよ。
あの日、間に合わなかった僕を、あなたは待ってくれていただろうか?
あの優しい笑顔で、許してしまっていただろうか?
返ってくることのない問い掛けを、毎年繰り返すだけの僕には、この一日が。
一年で何より悲しく、何より愛しい日。
いつかあなたに届けられるだろうか?
メリークリスマス。
また来年も祈りを捧げよう。
あなたに、あなたの魂に届くよう…
重い扉を開けると、鉛色の空から白いものがちらつき始めた。
夜がじんわりと街に染み込んでいた。