【2P完結短編ホラ-】記念日
楽しみの日
彼は、満面の笑みを浮かべて病室の前を行ったり来たりしていた。
もう、孫が二、三人、いてもおかしくない初老の男性だった。
新しくこの世界にやってくる者を迎えることを考えると、自然と笑みがこぼれてくる。
「まだか……まだか。早く、出て来い」
男は、もうずっとこの日を心待ちにしていたのだ。
彼が、まるで動物園の熊のようにうろうろしていると、スーツを着た青年が走ってきた。
「す、すみませんお義父さん。遅くなりました……まだですか?」
「まだなんだよ、一郎君。でも、もうすぐ……」
男がそこまで言いかけたとき、向こうからまた数人やってきた。
「これはこれは田中さんに、斉藤さん。山田さんまで……皆おそろいで、こんなところまでわざわざ……」
男が、笑顔で会釈をすると、後からやってきた人々は、口々に話しだした。
「いやいや、わたしたちも、いてもたってもいられなくて、見にきたんですよぅ」
「あたしも、この日が来るのを待ってたのよ」
「いや、私は関係ないんですが、たまたま近くにいたので、寄ってみただけなんです……おはずかしい」
「とんでもないです、山田さん。こういった事は、年長者の方がいてくださると、本当に心強くて、助かります。関係ないなんておっしゃらないでください」
男が、山田の手を握らんばかりに感激していると、一郎が冷静な声で言った。
「お義父さん。どうやら、そろそろみたいですよ……」
一郎の声に、その場にいた全員が、振り返ったのと同時に。
病室の扉が開いた。
もう、孫が二、三人、いてもおかしくない初老の男性だった。
新しくこの世界にやってくる者を迎えることを考えると、自然と笑みがこぼれてくる。
「まだか……まだか。早く、出て来い」
男は、もうずっとこの日を心待ちにしていたのだ。
彼が、まるで動物園の熊のようにうろうろしていると、スーツを着た青年が走ってきた。
「す、すみませんお義父さん。遅くなりました……まだですか?」
「まだなんだよ、一郎君。でも、もうすぐ……」
男がそこまで言いかけたとき、向こうからまた数人やってきた。
「これはこれは田中さんに、斉藤さん。山田さんまで……皆おそろいで、こんなところまでわざわざ……」
男が、笑顔で会釈をすると、後からやってきた人々は、口々に話しだした。
「いやいや、わたしたちも、いてもたってもいられなくて、見にきたんですよぅ」
「あたしも、この日が来るのを待ってたのよ」
「いや、私は関係ないんですが、たまたま近くにいたので、寄ってみただけなんです……おはずかしい」
「とんでもないです、山田さん。こういった事は、年長者の方がいてくださると、本当に心強くて、助かります。関係ないなんておっしゃらないでください」
男が、山田の手を握らんばかりに感激していると、一郎が冷静な声で言った。
「お義父さん。どうやら、そろそろみたいですよ……」
一郎の声に、その場にいた全員が、振り返ったのと同時に。
病室の扉が開いた。
< 1 / 2 >