あなたへ。
「ホントね、あたしって人当たり良いって言うか恵まれてんだよね、回りに。
それでね、あたしの友達の…」

三人揃ったあたし達は、近くにあった喫茶店に入った。
さっきから機関銃の様に勢い良く喋ってるのは武田まどかだ。
どうやらサークルで知り合った他大学の先輩に、気になる人がいるらしい。

まどかは高校2年の時から同じクラスで、同じグループだった。
大学やサークル活動を通じて、たくさんの友達や仲間が出来たらしく、綺麗にセットされた長い髪を弄りながら話す。

背はあたしと同じくらいの小柄なのに顔は小さく、目鼻立ちがはっきりとしている。
流行りの髪型と化粧をし、流行りの服装に身を包んだまどかは、まるでファッションモデルのようだった。

「良かったね。その先輩とは付き合えそうなの?」

あたしの隣ですかさず合いの手を入れたのは、同じく高校2年からの友達の中田千晶だ。
人気のメーカーの新作ワンピースを着て、可愛らしくフェミニンなまどかとは対称的に、Tシャツにパーカーを羽織り、ダメージデニムを履きこなしてる千晶。

やや伸びたショートカットと切れ長の目が特徴で、服装と相まって中性的な雰囲気がある。
中学・高校とバスケ部に所属していたので、背も高くすらっとしている。

「う〜ん…。メールは毎日しているんだけどねぇ。
あ、ねぇねぇこれ見て!
パパが最近昇進したの。
大学の入学祝いもまだだったし、思い切って買ってもらっちゃったぁ」

と言って(あたしは待ち合わせでまどかを見付けた段階で気付いていたが)若い女性に一番人気の海外ブランドの新作バッグをテーブルに置く。

「わーっ!凄いねぇ、これ!20万以上するんじゃないの?やっぱ、お父さんが外資系の企業にお勤めの家庭は違うよねぇ…ねぇ杏子?」

感嘆の声を上げた千晶は、さっきからドリンクにも手を付けず俯いたままのあたしを見やった。

「え、あ、うん……そうだね」

あたしは我に帰り、なるべく不自然にならない様に笑顔を作った。

「なんか元気ないね…大丈夫?」

「ひょっとして、バイトで
疲れてる?ごめんね、今日いきなり誘っちゃって」

千晶もまどかも、心配そうにあたしを見ている。
それは素直に嬉しいし、ありがたい。
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