あなたへ。
あたしが列に並びしばし携帯のメールチェックをしているとホールの会場時間になった。
客が徐々にライブハウスの中に入っていく。
今日のライブは対バンと呼ばれるアマチュアバンド3組による共演の形式だ。
ほとんどのアマチュアバンドのライブはこの形を取っている。
一般的に知名度が低いとされるアマチュアバンドやアーティストではやはり単独では多くの集客は望めない。
そこで複数のバンドが集まる事で集客を増やし、ライブを成功を目指す為だ。
もしライブが失敗したとしても、そのリスクを各々で分散させる事が出来ると共に最小限に留められると言う訳だ。

今日のライブに出演する3組のうち2組は、あたしの知らないバンドだった。
周りのゴスロリファッションの女の子達が、しきりにメンバーの名前を連呼しているが、どうもその客層から見るとコテコテのヴィジュアル系バンドのようである。

あたしのお目当てのバンドは、今日のライブのトップバッターの…。
と次の瞬間、スポットライトの激しい光がステージの中央を照らし、ホールが悲鳴にも似た黄色い声援で包まれた。
『彼ら』がそこに現れたのだ。
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