あなたへ。
それからと言うもの、あたしはすっかりフェニックスの虜になってしまった。
また彼らのライブに行きたい。彼らの奏でる音楽に身を委ねたい。
そして何より、明に会いたい。

その一心で、彼らについてまたもやインターネットで調べた。
そうしたらフェニックスが運営する、簡単なものではあったがバンドのホームページが見つかった。
そこにはライブの予定などが書いてあり、特別な用事がない限り足を運んだ。

それともう一つ、不定期ではあったがメンバーが交代で、各々日記という名目でブログを書いていた。
それが明の順番になる度に、彼のブログが更新する度に、あたしの胸は高鳴った。

ブログの内容は、いいメロディーが浮かんできそうなので、このまま自室で夜通し作曲する予定だとか、再来週のライブに向けて今はメンバー全員でスタジオで練習中といったバンド活動についてものがほとんどだった。

たまに運転免許を取る為に教習所に通っているだとか、大学でレポートの提出期限が迫っているが、全然手をつけていなくて焦っているといった、明の私生活についてもちらほら書いてあるのも目立った。

それを読んで、ステージに立っている時の、獲物の狙いを定めるライオンの様な挑戦的なオーラに包まれている彼ではない、ごく普通の、あたしと同い年の、今年で19歳になる若者の姿が、等身大の明が、ほんの少しだけ垣間見れた気がした。

もっと、色んな顔の明が見たい。
もっともっと、明について知りたい。

あたしはただ、フェニックスの、明のファンというだけなのに。
明はあたしのことなんて知らないのに。

こんなことを想うなんて、おかしいんだろうか？
この感情は、恋と呼んでいいものなんだろうか？
それとも、ただの憧れ？

それに名前を付けるのが、付けられるのがなんだか怖くて、あたしはこの事をまどかにも千晶にも、誰にも話していない。
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