あなたへ。
世間の不景気の波は、パパ達の様な家庭の為に身を粉にして働くサラリーマン世代だけでなく、新卒で社会に出ようとするあたし達にも深刻な影響を与えた。

やはり学校は成績や内申の良い子を優先して、職を斡旋する。
もともと集団生活が嫌いで、意味もなく学校をサボったり、テストの成績だって学年全体で400人中350位前後を3年間で常にキープし続けたあたしの様な生徒が、進路相談室に神妙な顔をして現れたところで、先生は苦笑いを浮かべるしかないのだ。

あたしが何度も就職試験に落ちたり、挙げ句の果てには卒業寸前にも関わらず、一つも内定を貰えないとなると、パパはどんどん口数が減り、ママはさめざめと泣いたり、時には露骨に大きなため息を吐いた程だった。

そんな落ちこぼれのあたしとは対照的に瞬介は、受験校を家から歩いて通える公立の進学校一本に絞り、見事合格した。
ちょうど合格発表の時期と重なって、パパが知り合いのツテで建築資材卸売の営業職に再就職した。

ママはその日の夜、二人とあたしの卒業祝いだと、腕によりをかけてご馳走を振る舞った。
特に瞬介の合格が嬉しくてママはずっとご機嫌だったけど、結局就職が決まらないまま卒業したあたしの顔はあまり見ないままだった。
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