ずっと前から好きだった


「ごめんね…かっちゃん」


「…………………。」



抱きしめられていた体が離れ
かっちゃんは真っすぐに
私の事を見て、親指で
私の涙を拭ってくれた。




「そんなに辛いなら…」



切なそうな表情で
かっちゃんは
小声でそう言った。

だけど続きは言わなかった。


無言で
私の手を引っ張って
家まで送ってくれた。




「かっちゃん………」



「ちゃんと寝ろよ。
 目、腫れないように
 なんかしらしとけ。

 おやすみ」




家の玄関の前で
ふっと優しい笑顔をくれた。




「おやすみなさい」






小さくなっていく
後ろ姿を消えるまで
私は見守った。




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