ずっと前から好きだった




あっという間に終わってしまう


至福の時ってやつは。




「終わっちゃった、ライブ」


「まだあたし達
 始まったばっかじゃん。
 これからいっぱい
 ライブできるって」


帰る支度を終えた魅麗さんが
ベースを背負って私に言った。



「かなちゃん、打ち上げ
 お好み焼きだけど平気?」


「全然。楽しみ」





迅さんの運転で
私達は車に乗った。

駐車場を出ると
ぱらぱらと出待ちする
ファンの姿があった。



「出待ちとか超感動!!」



魅麗さんが窓を開けて
ありがとうと手を振った。

興奮するファンに
私達も手を振った。



心の底からの感謝の気持ちが


溢れ出た。




そんな私の視界に
一瞬だけ


ほんの一瞬



幻覚かもしれない


だけど一瞬



あなたの姿をみた。




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