ずっと前から好きだった
止まった車の扉を
何も考えずに
すぐさま開けて出ようとした。
だけど
私を引き止めるかのように
私の腕は掴まれていた。
「かっちゃん…」
私の行動に
何か感づいているような視線で
私を見ていた。
「行きたいの…」
強く掴まれた腕が
少しジンジンしていた。
前向きにかっちゃんの想いに
答えようと決めたはずなのに
もう私の頭の中は
飯島でいっぱいだった。
だけど
かっちゃんは
「芸能人なんだから…」
そう言って
自分の被っていたキャップを
私に被せた。
「顔見られたらやばいだろ?」
私を引き止めず
背中を押してくれた。
切ない表情で言ったかっちゃんに
胸が痛んだ。
深々と被ったキャップ
それでも私はそのまま
全力で走っていた。