偽りのプリンセス
花売りを見つけ、買う花を選ぼうとした。
けれど、今日はやけに花が少ない。
「今日は少ないのね」
花売りにそう言うと、彼はにっこりと笑った。
「今日は王子様の結婚式なんで、王様が街中の花屋の花を大量に買っていかれました」
「……そ、そう」
王子様の結婚式と聞き、少しだけ涙が出そうになった。
やっぱり私みたいなのが王子様と結ばれるわけなかったんだ。
期待して、舞い上がって……馬鹿みたい。
ぼやける視界に、一輪の赤い花が映った。