3を3回、2を2回
ニコの憂鬱
5月
カチカチカチカチ。
真っ暗な部屋で布団を被って。
どうするわけでもなく、ただ闇雲に携帯をいじる。
仄暗いディスプレイの明かりが天井へ大きな影を映し出す。
深夜三時。
今日もなにもしなかった。
できなかった。
そんな絶望感に打ちひしがれて、ニコはただぼんやりと思考を止めていた。
『高校の頃はこんなんじゃなかった』
最近のニコの口癖だった。
2ヶ月前にニコは高校を卒業した。
高校時代はバスケ部のエースとしてみんなの中心にいた。
女子校だったこともあってか、スポーツ万能で男勝りなニコの性格に周りはチヤホヤし、ニコもそしてニコを取り巻く周りの人も、まるでニコを中心に世界は回っているような生活を送っていた。
短くツンツンとした髪型。
周りを見下すほどの高身長。
化粧っ気のない存在感。
鍛え上げられたら肩幅。
ニコは女子しかいないお城の中で男のような佇まいだったため、
時には羨望を向けられ
時には戦士として扱われ
まるで本当の男子のような錯覚すら覚えていた。
大学受験に失敗したニコは思いの外、沈んではいなかった。
「私にはこんなに私を応援してくれてる友達がいるし、一年頑張って良い大学に入ってまたいっぱい楽しいことするんだ!」
前向きだった。
そう、卒業式が終わるまでは。
高校生じゃなくなった途端、
ニコの魔法は無惨にも
跡形もなく解けてしまった。
そこにいるのは、
何の取り柄もない、
浪人生。