3を3回、2を2回



「じゃぁ、今日はこのへんにして。分からない所があった人はあとで講師室まで来てください。」


午前中最後の授業が終わり、ざわざわとクラスが賑わい出す。



「今日なに食べる?」

「コンビニいこーぜ」


それぞれのセリフが教室で飛び交う中、ニコは携帯を握り締め、財布を持って立ち上がった。

予備校に友達のいないニコは、毎日この時間になると、こうして席を立ち、予備校から少し遠いほうのコンビニに行く。
そこでいくつかのおにぎりと飲み物を買い、雑踏めいた大通りを少し入った小さな公園で一人ランチをしていた。



もちろん、今日もそのつもり。



小一時間のその退屈な時間も、今日はなんだか違っていて。

もしかしたら、
という期待から少し足取りも軽かった。




「早く行こう…」

ガタッとイスから立ち上がろうとした瞬間、




「小谷さん!あの…!」

急にニコは呼び止められた。



それは後ろの席にいる、少し大人しそうな女の子。

短く切りそろえられた少しくせっ毛の黒髪。
化粧っ気はニコ同様になく、いつも茶色のカーディガンを羽織り、ジーンズにスニーカを履いていて、背はニコより少し小さい。




「は…はい?なに?桑田さん」

話しかけられたらことに少しびっくりしたニコだったが、咄嗟に笑顔をつくり小さな声で返事をした。




「あの、良かったら、一緒にご飯食べない?」


そういえば、この子もいつも独りでご飯を食べてたな、と、ニコは思い返す。

しかしそんなことはどうでもよかった。

何より、ずっと孤独だった予備校生活で
始めて友達が出きるかもしれない
そんな微かな淡い期待のほうが今の自分にとっては大事だった。



「う…うん!」



持っていた携帯を再びカバンの中に放る。



ニコはその女の子に名前を呼ばれた瞬間に、
サイトのこと
ボックスのこと
全てを忘れ去ったのだった。



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