超モテ子の秘密
第3章
壊れた腕時計
私の目には、今、その人しか映っていない。
私の視線の先には、ジーンズを履き、白のロゴTに黒のジャケットを羽織った人が、アパートの壁に寄り掛かって立っている。
長身に、サラサラの黒髪。
何でここに………?
「………陸…人?」
私はやっとその人の名を口にした。
すると、その人は下を向いてた顔を上げ、優しく笑いかけてくれた。
―――何も変わってない優しい微笑み。
「さやか、おかえり。」
ずっと電話で聞いてた声。
――――――陸人だ――。
そして、陸人は透明の傘をさし、私のところまで歩いてきた。
「久しぶりだな。元気だったか?」
「陸人………!」
私は思わず抱きついた。
―――夢じゃない…。
本当に陸人がここにいる。