超モテ子の秘密
私は涙が溢れてくる前に、かたく瞼を閉じる。
その刹那、両肩に優しいぬくもりを感じた。
「頭をあげなさい。」
耳に入ってきたのは、落ち着いたやわらかい声。
私は渡辺さんに促されるまま、ゆっくりと体を起こした。
肩に触れたあたたかくて大きな手、そしていつもと変わらない穏やかな顔。
……何でいつもと同じなの?
「怒ってないんですか?……がっかりしてないんですか?」
渡辺さんの反応があまりにも優しすぎて、思わず質問が口をつく。
「怒ってなどないよ。少し驚きはしたが、さやかちゃんは家のためにバイトを頑張っていたじゃないか。それは嘘じゃないだろう?」
渡辺さんは冗談交じりに笑いながらそう言った。
私はそんな大きな優しさに、胸がいっぱいになって、頷くのが精一杯。
……涙も溢れてきそうだ…。
「お客さんも来ないし、中にあがって少し話そう。」
そう言って、渡辺さんは居間に向かう。
――渡辺さんの優しさが胸にしみてくる。
そして、私も居間にあがらせてもらうことにした。