超モテ子の秘密


すると、渡辺さんは眉をハの字にし、さみしそうな顔をする。


「それにしても残念だね……。ここを辞めなきゃならないんだろう?」


「……はい。」


私は持ってきたエプロンを名残惜しく掴んだ。


「申し訳ありませんでした。……それから、本当にお世話になりました。――ありがとうございました。」


本当に辞めなきゃならないんだよね……。


辛いなぁ………。


そう思いながらも、渡辺さんにエプロンを差し出した。


「バイトを辞めても、それはさやかちゃんのだ。」


渡辺さんはエプロンを受け取らず、そう言ってくれたのだ。


「もらっていいんですか……?」


このエプロンだけでも残るなら、私には願ってもないことだけど――。


「思い出に持っていてくれれば嬉しいんだがね。」


「ありがとうございます!」


私は精一杯お礼を言い、エプロンを抱き締めた。


「お礼を言うのはこっちの方だよ。さやかちゃんがここに来てくれたこと感謝してるんだ。」


渡辺さんは優しくそう言うと、少し遠くを見つめた。



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