超モテ子の秘密
「まだ話したことがなかったがね、私には息子がいて、そして、さやかちゃんより少し大きい孫がいるんだ。」
渡辺さんは話し始めると、少し背中を丸め、重いため息を吐いた。
こんな渡辺さんは初めて見たような気がする……。
「孫は大きくなるにつれて、あまり来なくなった。こんな古くさい本屋は嫌みたいでね……。私も時代に合わないのはわかってるんだ……。」
そう話す渡辺さんの姿からは、まるでさみしさが滲み出ているようだった。
私はちょっと戸惑ったけれど、思ったことを口に出してみる。
「――私は、ここ、大好きですよ。本の香りも、常連さんも、渡辺さんも。ここは落ち着ける素敵な場所です。」
働き始めた頃はそういうふうに思わなかったけど、今は全然違う。
古くさいって思う人はいるかもしれないけど、ここはすごくあたたかい場所なんだ。
だから、そんなふうに思わないでほしい……。
「ありがとう――。」
渡辺さんはさみしげな表情を残しつつ、ちょっぴり微笑みをみせる。
私は渡辺さんの役に、少しはたてたのかな……?