超モテ子の秘密
私には、絶対受け取れない。
受け取る資格がない。
私は、その茶封筒を押し戻した。
「さやかちゃんは十分働いてくれた。これは当然のことだよ。」
渡辺さんは私の手をとると、茶封筒を握らせる。
「……渡辺さん…。」
「いいから、持っていきなさい。」
そう言う渡辺さんは優しくてまっすぐで説得力がある。
なんだかお父さんに言われているような気分――。
申し訳ないような気がしたけれど、私はそんな渡辺さんを見ていると返せなかった。
「……すみません。ありがとうございます。」
私が好意を受け取り一礼すると、渡辺さんはゆっくりと頷いている。
「本当にご苦労様。これからはさやかちゃん、一人で無理しないように――。元気でな。」
私を見送ってくれる渡辺さんの姿は、とてもあたたかく優しかった。
「はい。渡辺さんもお元気で――。」
涙をこぼさないようにしながら、もう一度感謝とお別れの意味を込めて頭を下げる。
……渡辺書店、
………渡辺さん、
ありがとう。