超モテ子の秘密
「さっきの聞いてました。本当に先輩は、お人よしですね。馬鹿がつくほど。」
愛奈ちゃんは無表情のまま、刺々しい言葉を投げかける。
そして、私の横を腕を組みながら通り過ぎ、ゆっくりと歩きながら話しかけてきた。
「普通はあそこまでのことされたら、言いますよ、犯人の名前。私なら、言いふらしてやります。」
愛奈ちゃんは自虐的に笑いながら話している。
私はその後ろをゆっくりとついて行った。
すると愛奈ちゃんは立ち止まり、窓から外を眺め始めた。
「ねぇ、何で言わないの……?こんな私のことなんか……。」
愛奈ちゃんの声が廊下にさみしく響く。
「だって、約束したじゃん。まあ、許したわけじゃないけどね。」
私は愛奈ちゃんににっこり笑って言った。
もうどうでもいいのだけれど、少し冗談交じりに最後の言葉をつけて。
「変ですよ。なんかキャラ変わりました?」
訝しげに私を見つめながら、愛奈ちゃんが言う。
「そんなことないと思うけど?それより変わったのは愛奈ちゃんじゃない?」
「どういう意味ですか?」
私がそう言うと、すごく不機嫌そうに聞き返してきた。
私は愛奈ちゃんを眺めて、改めて変わったなって思う。
初めて会ったときから感じていた威圧的な違和感も、
あの愛想笑いも、
――今はない。