アタシがホストになった ワケ
立ち尽くすアタシ。

頭悪いから整理に時間かかる。


電話を切った蓮がケータイを
パタンと閉める音がした。

落ちついて、萌にゃん。
アタシは萌にゃんなんだ…

考えても涙が溢れる。
カッコ悪い…


カチャ――キイ―…


アタシはドアを開けた。

さすがに焦った様子の蓮。
でも次の瞬間すべてを悟った
ようにソファに深く座り直した。


「あ、これ?」

蓮は茶色い封筒をヒラヒラさせてテーブルに投げた。

初めて聞いた、氷のように冷たい声。


涙は乾いていた。


「ハハッ、ウケんなお前。
スゲータイミング。これ、
修羅場ってやつ?」


鼻で笑いながらタバコをふかす。


『萌にゃん、忘れ物しちゃった!
エヘッ』


アタシは萌にゃんだ。

蓮は泣かれるか、怒鳴られるかを
想像していたらしく、
驚いていた。


次の瞬間、
アタシは蓮に歩み寄り、


キスをした。



『忘れ物、最後のキスにゃん♪
バイバイ、蓮!』


笑って手を振り、封筒を持って
ダッシュで店に帰った。



アタシは萌にゃんだから。


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