アタシがホストになった ワケ
お昼過ぎ、たかサンが来た。
いつもと違うラフなカッコに
ドキッとする。

――…うわ、髪もセットして
ないとサラサラ!

いや、アタシ今日からメンズに
なるのに何ときめいてんのよ!


「萌。コーヒーくれる?」

シークレットプランが
いよいよスタートする。


ゴクリと唾を飲んだ。


アタシはたかサンにコーヒーを
出して、向かいの席に座った。


「い〜感じに目が腫れて
んね(笑)」


『あっ……』

思わず手で目を押さえる。

「まぁ、無理もねーよ……な」


たかサンはそう言って、
複雑な顔をしてタバコに
火を点けた。


「さてと、髪も切る覚悟
できたか?」


『うん、だいじょぶ…』


「へぇ?」


たかサンがアタシの目に視線を
突き刺してくる。

強く、鋭い中に、優しさがある。

この人のコト、今まで全然
知らなかった。

たまにくる金持ちの客で、
カリスマホストだったこと、
この街の有名人てことくらい。


それなのに、アタシは
これからの人生を、この男に
そっくり預けようとしている。


何でかわからないけど、
アタシはいつだって流れには
逆らわないできた。

人生は、そうなるように
できている。

これも、必然。


委ねよう、すべてを。

この男を信じてみよう。


アタシは、たかサンの目に
賭けてみようと誓った。

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