ツギハギ

翠は最後まで読むと
なんだ、
チェーンメールか、と
さほど驚きもせず
消却を選択した。

数年前の学生時代なら
怖いだの
面白いだの
色々な解釈で
発信主の思惑通り、
転送したりしただろうが

もう少しで母親になろうとしている翠には
馬鹿馬鹿しいにも程がある遊びに思えた。

翠は
今時チェーンメールとかやる人、まだいたのね。

そう鼻で笑い
携帯を充電器に戻した。



そして
その携帯が再度メール着信を知らせたのは
翠が洗濯を終え、
掃除を始めようとした時だった。

携帯を手に取り
開いてみると、
また設定外フォルダーに届いている。

何と無く、
チェーンメールな気がした。

それでも一応フォルダーを開く翠。

やはり先程のアドレスだった。

件名:どうして

翠はメールを開封せずに消そうとして

そして、手を止めた。

なんだか内容が気になる

翠は消却をキャンセルし
メールを開いた。


data:4/16 10:25
From:*********@
件名:どうして


止めるの?

アナタが持ってるの?



ケイコ






翠は気味が悪くなり
すぐに消却しようとした
だけど…

なんで、私が送ってない事気付いたのかしら…

そこがひっかかる。

そしてなんだか
気味が悪いからこそ
転送しなければいけない気持ちも沸いてくる。

すぐに消さなかった事を後悔しつつ
アドレス帳を開こうとした。

だけど、ふと思う。

私、ママになるのに
こんな嫌な気分を
他の人にさせるの?
そんな非常識な事を?
と。

送れば、自分は気持ちが晴れる。

だけど
送られた人は?

遊びだって言っても
やはり受け取る人は気持ち良くないだろう。

そんな風に考えた。

結果、なんだか腹が立ってきた。

何処の誰だかわからないけど
身重で一生懸命家事をやっているのに
それを中断させて
あげく不愉快にさせるなんて

許せない

そう思った翠は
発信元のアドレス…
ケイコと名乗る相手に返信をすることにした。




< 18 / 31 >

この作品をシェア

pagetop