ツギハギ
「ねーってば、ねー」
日曜日の公園。
「この前お人形買ったばかりでしょ?」
その中を一組の母子が手を繋ぎ歩いている。
「でもあれはトトちゃんじゃないもん、ゆな、今トトちゃんが欲しいの」
子供が駄々をこねるように母の手を引く。
「だーめ、また今度にしなさい」
その日公園では
フリーマーケットが催されていた。
そんな中、先程から娘の優奈は公園に来る途中、玩具屋で見た
ままごと人形トトちゃんが欲しくて
必死に母親の直子にねだっていた。
「やだ!今日欲しいの
今日買って!」
優奈は今年7歳
小学校1年生
直子の家庭は父親はおらず、所謂母子家庭
父親がいなくても
不自由なく暮らさせてあげたい
直子はそう思い、できるだけ優奈が欲しがるものは買い与えてきた。
だが最近、そのせいか
優奈が我が儘になってきている。
「買って買って買って!」
白昼、フリーマーケットで人がごった返す公園
金切り声をあげて
優奈は地団駄を踏む。
「優奈、聞き分けのない子はママ嫌いよ。」
直子は歩みを止め、振り返ると
優奈に視線を合わせるようにしゃがみ込んで
「優奈、貴女もう小学生なんだから、我慢するって事も覚えないと」
諭すように話しかけるが
優奈は口を膨らませ
涙目で直子を見ている。
「今日は公園のブランコで遊ぶんでしょ?
そんな、ふて腐れたれ顔 じゃ、ママ帰っちゃうよ?」
そんな優奈に直子はさらに諭すように言う。
すると優奈は無言でイヤイヤと首を振って
直子の手をギュッと握った。
普段直子はパートを掛け持ちしている為に
なかなかこうして
優奈と出かけたり
遊ぶ時間がない
だから我が儘を言って、直子が帰ってしまったら
次いつまたこうして一緒に遊びにこれるかわからない
優奈は渋々膨らませた口を萎める。
そんな様子に
直子はクスリと小さく笑い、立ち上がると
小さな優奈の手を握り直し歩きだした。