勿 忘 草
カタン、と音を立てて扉が開く。
シン、とした部屋の中に
人の気配はしなかった。
携帯を静かに取り出し
時間を確認する。
午前二時過ぎだった。
携帯を直し、リビングの電気をつける。
そして、迷わず仏壇に向かう。
写真に、手を合わせる。
両親が穏かな顔で微笑んでいる。
両親は、二年ほど前に交通事故でなくなった。
今より押さなかった二人を
引き取る、という親戚の案を猛反対して
両親と共に住んでいた家にいまだ住んでいる。
2人にしては広いが、それなりに楽しいのでいい。
別に1人の片割れは、引き取られてもいいと思った。
しかし、もう1人の片割れが
文句を言わずに隣に座って、ギュ、と服の裾を握ってるのだ。
「 家から離れたくない 」
そんな心の中が丸見えだった。
もう1人の片割れのために反対したのだ。
自分のためではない。
小学生だった2人は中学生へとなっていた。
「 ただいま、母さん、父さん 」
穏かな低く心地の良い声が響いた。
写真の中の両親は勿論何も言わない。
何かをいってるとしたら、
もう少し早く帰って来いぐらいだろう。
明日も学校がある、そろそろシャワーを浴びなければ
と想い振り返ろうとしたところで、ふと人の気配を感じた。