treasure(宝物)








「じゃあ行くよ」


ドアからお父さんが顔を出した。


―施設に移動―

移動中の車の中では誰も喋らなかった。
早く行きたい。
でも行きたくない。

私の中には複雑な気持ちでいっぱいだった。

3人が乗っている車がゆっくりと止まる。

「着いたよ…」


車を下りた。
そんなに大きくはないが立派な家。
屋根が赤色で珍しい。

入り口の上に

「さくら」と書いてあった。
施設の名前だ。


すぐに中からおじさんとお姉さんが出てきた。


「初めまして」


「初めまして。よろしくお願いします」


おじさんと両親がお辞儀をした。

顔をあげたおじさんが言った。

「2人に…最後に言いたい事はないのかい?」

言いたい事?
言いたい事ならいっぱいあるよ。
だけど言い出したらきりがない。
だからこれだけ伝えるね。



「さよなら」




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