treasure(宝物)
瞳は自分の事をひーちゃんと呼ぶ。
「ひーちゃん(瞳)」
瞳は自分の名前を呼ぶと指で入り口を差した。
「帰りたいの?部屋行きたいなら、一人で行っておいで」
「やだ~!」
瞳は手足をバタバタさせながら、泣き叫んだ。
「また始まった。瞳のわがまま…」
と康平が呟いた。
「いつもの事なの?」
「うん。いつもの事…」
やっぱり大変だね…。
愛理は仕方なく瞳を連れて部屋に戻った。
康平は何も喋らず、ただ床に寝転がってる。
「幸ちゃんはどうしてここにいるの?ここにいて幸せ?」
自分が聞かれて嫌な事を無意識に聞いていた。
「幸せだよ。幸と兄ちゃんは親に捨てられたの。最低な親だよね」
私と同じ…。
親に捨てられた気持ち、この人たちなら分かってくれるのかな…。
幸の話を聞きながら、そんな事を思っていた。