treasure(宝物)



瞳は自分の事をひーちゃんと呼ぶ。


「ひーちゃん(瞳)」


瞳は自分の名前を呼ぶと指で入り口を差した。


「帰りたいの?部屋行きたいなら、一人で行っておいで」

「やだ~!」



瞳は手足をバタバタさせながら、泣き叫んだ。



「また始まった。瞳のわがまま…」


と康平が呟いた。



「いつもの事なの?」



「うん。いつもの事…」



やっぱり大変だね…。



愛理は仕方なく瞳を連れて部屋に戻った。

康平は何も喋らず、ただ床に寝転がってる。


「幸ちゃんはどうしてここにいるの?ここにいて幸せ?」



自分が聞かれて嫌な事を無意識に聞いていた。



「幸せだよ。幸と兄ちゃんは親に捨てられたの。最低な親だよね」



私と同じ…。
親に捨てられた気持ち、この人たちなら分かってくれるのかな…。



幸の話を聞きながら、そんな事を思っていた。







< 33 / 136 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop