treasure(宝物)






「私の名前はね。<幸せ>って書いて幸って読むの。ママが幸せになれるようにってつけてくれたんだって。
なのに私は幸せじゃない。笑っちゃうでしょ!?こんな名前欲しくなかった。」



そういうと幸は立ち上がってホールの中を走り回った。
嫌な事を風に流すかのように。




「幸はさ…」


康平は体を起こし何かを喋り始めた。



「幸はさ、あんな事言ってるけど、母親や父親に会いたいって思ってんだよ。いつか会えるって今でも信じてる。

母親がくれたあの名前も本当は嬉しいだと思う。母親に貰ったプレゼントなんて幸は名前くらいだから。

大切だからこそ、あんな言い方しかできない。」



名前は母親からもらった最初で最後のプレゼント…?!

大切だからこそ、あんな言い方しかできない…
まだ小学二年生の心がこれほどまでに痛んでいる。






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