treasure(宝物)
ワン、ワン!!
草村から犬の鳴き声がした。
瞳をおぶったまま、草村に顔を出すと箱の中に小さな子犬が捨てられていた。
瞳をおろすと瞳は笑顔で犬に近づいた。
「ワンワン!」
犬に指を差しながら言った。
「ほんとだね」
犬の種類は柴犬。少し汚れている。
「ほちい!」
多分欲しいって言いたかったんだと思う。
「裕子姉ちゃんが飼ってもいいって言ったらいいよ」
そんな事を言ったものの、飼えるわけなんてない。
そんなお金ここにはないし、面倒なんてみれない。
おじちゃん(施設のお父さん)も犬が嫌いだし…。
ダメだと言われるのを覚悟でとりあえず連れて帰った。
リビングに入るといつものように裕子姉ちゃんがテレビを見ていた。
「愛理、どうしたの?その犬!」