treasure(宝物)
「拾った。裏で捨てられてたの。飼ってもいい?」
「いいわけないじゃん。そんなお金ここにはないし、ましてや面倒なんて誰が見るのよ。それにお父さんが犬嫌いなの知ってるでしょ?」
案の定ダメだった。
犬を戻しに草村に向かった。
ダメだと言われるのは分かっていたはずなのに…。
でもこの子犬、自分たちに似ているような気がして…。
私たちにも親がいない。
この子犬にも親はいない。
仕方がない事だよね。
でも……
草村に向かう途中、私は足を止めた。
「お姉ちゃん?」
やっぱりほっておく事ができなかった。
体をクルッと180度回転させて施設に戻った。
「お姉ちゃん、草村あっち」