treasure(宝物)
バレてしまった。
親のいない子犬を捨てるなんて私にはできない。
でも…もう言いようがなかった。
草村に向かう私の足どりは重かったはずなのに早く感じた。
子犬をダンボールに下ろす。
「ごめんね…」
私の目から零れ落ちた涙が子犬を濡らした。
くぅ~ん…―。
子犬は目に涙をウルウルさせて私を見つめた。
「本当にごめんね…」
私はその場から走り去った。
ここにいればずっと涙を止まらない。
ほっておけなくなる。
空…ごめん。
私が子犬を返しに行ってる時、リビングで裕子姉ちゃんと亜美姉ちゃんがこんな話をしていた。