treasure(宝物)





話を聞いていた亜美姉ちゃんが言った。


「裕子姉ちゃん、なんとかしてやれないの?」



「飼えないものは飼えないの!」




「でもさ…」



「でもでもってうるさいよ!!飼えないって言ってるでしょ?!」



「裕子姉ちゃんは何もわかってない。愛理がどんな思いで隠してたか…。
牛乳買うっていいだしたの覚えてる?
あんなに牛乳が嫌いな愛理が欲しいって言った。あれは犬のためだったんだよ?


愛理言ってた。
あの子犬が自分たちに似てるような気がするって。子犬にも親はいない。自分たちにも親がいない。だからほっておく事ができなかったんだって!

裕子姉ちゃん、お願い。一度、一度でいいから、愛理の願いを聞いてあげてほしい。
愛理の気持ち、私にはわかるから…。


お願い…」




裕子姉ちゃんは何も言わずリビングを出た。







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