treasure(宝物)
私は子犬を返してすぐ施設に帰った。
リビングに亜美姉ちゃんがいた。
ソファーに座って俯いたまま。
私の事を考えてくれてただなんてこの時はまだ知らず何も声をかけないまま部屋に向かった。
部屋のドアをバタンと閉め、その場に座り込んだ。
頭の中には子犬の顔が浮かんだ。
ごめんね…なにもしてやれなくて。
本当にごめん。
布団に潜り込み、私は眠りについた。
「愛理!愛理!」
私の名前を呼びながら、誰かが体を揺らしてくる。
目を開けると太陽が眩しかった。
「もう朝か…」
「いいから早くきて!」
声の主は亜美姉ちゃん。
目をこすりながら、どこかに連れて行かれた。
連れて行かれた場所はリビング。
リビングにはみんなが集まっていた。