treasure(宝物)





「実は…」


「実は?…早く言えよ」


「実は今日から藤井は家の都合で転校する事になりました。藤井から最後の一言。」


みんながざわついた。


「そんなの聞いてないよ!」

「嘘でしょ?」

「夏葉…?!!」



「家の都合で転校する事になりました。出来ればみんなと卒業したかった。一緒に卒業できなくてごめんな…さい。今までありがとうございました」



深くお辞儀をすると、私は教室を飛び出した。涙が溢れそうだったから。



一緒に卒業できない私を
親友にまで黙っていた私を
どうか許して下さい。


今までありがとう…。


そう想いながら、廊下をゆっくり歩く。


「夏葉!!」


後ろから誰かが呼んでいる。
足を止め、振り向くとそこには美智と佳奈がいた。






< 8 / 136 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop