treasure(宝物)
「実は…」
「実は?…早く言えよ」
「実は今日から藤井は家の都合で転校する事になりました。藤井から最後の一言。」
みんながざわついた。
「そんなの聞いてないよ!」
「嘘でしょ?」
「夏葉…?!!」
「家の都合で転校する事になりました。出来ればみんなと卒業したかった。一緒に卒業できなくてごめんな…さい。今までありがとうございました」
深くお辞儀をすると、私は教室を飛び出した。涙が溢れそうだったから。
一緒に卒業できない私を
親友にまで黙っていた私を
どうか許して下さい。
今までありがとう…。
そう想いながら、廊下をゆっくり歩く。
「夏葉!!」
後ろから誰かが呼んでいる。
足を止め、振り向くとそこには美智と佳奈がいた。