海宝堂2〜魔女の館〜
バンズは本気でリュートが好き。
リュートがこの調子なので実らない恋ではあるが、それをさも当然のことのように言われると、自分がバンズの恋路を邪魔しているような錯覚に陥りそうになる。
いやいやっ!頭を激しく振って、その錯覚を打ち消し、もう1度バンズを見る。

「本気なら、やり方があるでしょ?今は何してもおびえさせるだけよ。」

バンズはなるほど、と手を叩いて、先に行くと背中を向けた。

「ほら、リュート、行くわよ。あいつなら遠ざけたから大丈夫よ。」

ずっと下を向いたままのリュートに近づき肩に手を掛ける。次の瞬間、手に痛みが走り、振り払われたということに気づく。
顔を上げたリュートの目は我を失い、狂気に満ちていた。

「だぁああああっっ!!」
< 132 / 273 >

この作品をシェア

pagetop