海宝堂2〜魔女の館〜
「ガルっ!」

その目に光は無く、マティリを守るという意思さえ感じられない。蹴りを引くと、後ろのマティリを睨みつけた。
シーファのスピードに圧倒されたのか、情けなくも尻もちを付いてしまっている。そのせいか、村の人達は意識を取り戻し、次々と逃げ出していく。
一人残らず出ていったのを確認して、マティリを睨み付ける。

「ガルと村の人達の記憶を返して!」

マティリは怒りに顔を歪める、しかし、またも、すぐに笑みを浮かべて手を差し出す。
すると、ガルはその手を取り、マティリを助け起こす。
そのままマティリがガルの背中に腕を回し、胸に顔を埋めると、ガルは優しくマティリを抱きしめ返す。
シーファの胸が狭くなったように苦しくなり、ちりちりと焼けるように痛い。
マティリは横目でこちらを見ると、ニヤリと笑った。

「この人はもう私のもの。2人の間に割りこまないでくれる?」

「そんなの、ガルの意思じゃないっ!」
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