海宝堂2〜魔女の館〜
もはや、体が痛いという感覚すらない。片方しか見えぬ目で見上げれば、冷たい目をしたガルがこちらに向かってくる。

最初は追ってくるスピードも全力だった。それが自分が動けなくなるにつれて、歩み寄るように近づくように変わった。

薄れそうな意識の中で、その姿はいつもの姿とダブるのに、差し出される手は無く、拳が振り降ろされるばかり。

絶望しそうな時に、来てくれたニーナとリュート。
リュートのいつもの姿に希望が戻ってきた。
このまま、あとわずかな時間我慢すれば、ガルも戻ってくる。そう思うと、まだ頭も働くし、足も動いた。

立ちあがり、ガルに笑顔を向ける。

「ガル…私は…忘れ…ないよ…?
皆が…話してくれた…今まで…の、こと…とても…楽しそ…う、だった…。」

マシュー号に初めて乗った時、教えてくれた旅の理由。
それはとても輝いて、あの時の私にはまぶしくて、とても惹かれた。
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