海宝堂2〜魔女の館〜
まさか、今度はダートンを狙い、連れて行かれた?そんな事が頭に浮かんだ時、入り口に向かう道からダートンが顔を出した。

「俺ならここだ。わりぃ、あの女、逃がしちまった。」

「…追って、くれたの?」

ダートンはシーファの前にしゃがみこむと、微笑んで優しく頬に手を添えた。

「ダートン?」

「いや、戻るとするか。」

「でも、まだ奥で調べたいことが…」

「お前の手当てが先だ。いいよな?」

もちろん、と、ニーナとリュートは声を揃えた。
そして、2人の間からガルが近づいてくる。

「ガル。記憶戻って良かったね。」

笑顔を向けると、ガルはああ…と小さく言っただけで、シーファを抱き上げた。

「が、ガルっ、あの…歩けるから…っ。」

赤くなって降りようとするシーファをガルは無言のまま決して離さず、入り口に続く道へと歩きだす。
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