海宝堂2〜魔女の館〜
『お父様!接見中だったのでは…?』

『そんなものは、どうでもよい!一体どこへ行こうとしていたのだ!?もしや、また海の上ではあるまいな!』

誰よりも学び、数々の薬の調合を編み出し、魔女とまで呼ばれた<彼女>の接見を王は早々に切り上げたあげく、“そんなもの”、そう言い放った。



『あなたはこの国の姫だというのに、これ以上何を望むのです?』

『姫という立場がどれほどのものなの?いつも城に縛りつけられて…私は自由が欲しい。』

『自由?あなたにはこの国の誰も叶わない力があるじゃない。』

『そんなものいらない!私は…あの人のいる陸の上で暮らして行きたいの。だから、お願い…』

その力の強大さも価値もわからず、ただ、自分の恋を叶えるためだけに、それを全て捨てようとした姫は、泣きながら<彼女>に人間にして欲しいと懇願した。
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