海宝堂2〜魔女の館〜
追い風に大きく帆が膨らむと、ゆっくりとマシュー号は波間を滑りだす。

船着場を振り返ると、ダートンの隣で名残惜しそうにバンズが手を振っている。船の上からも皆が手を振ってくれている。

もう1度だけ手を振り返すと、シーファは眼前に広がる海に視線を戻した。

「良かったのか?諦めるなんてお前らしくもねぇ。」

遠ざかる船影を見つめるダートンにバンズが言う。

「お前こそ良かったのかよ?めったに出逢えないタイプドンピシャだったんだろ?」

「ま、リュートは笑ってる顔がカワイイからな~」

「…そうだな。あの女は、俺には手に追えねぇよ。まっすぐ過ぎで。
あいつの記憶を結晶化したら、きっとダイヤみたいに透明で輝いてんだろうさ。」

ダートンはマントを翻し、小さくなった船影に背を向けた。
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