海宝堂2〜魔女の館〜
ここの海は上も下も綺麗。
シーファはさっき森で深呼吸したように、体を伸ばし、くるくると円を書きながら泳いだ。

胸の紋章が光を放つ時は、シーファに流れる人魚の血も目覚める時だ。
足がヒレに変わるようなことは無いが、魚のように泳ぐことが出来る。これも王家の紋章のなせる技なのだろう。
息苦しさなども全く感じない。周りの海水が空気の様に、とても心地よかった。

自分の周りは地上から砂浜が続いていて、所々に海草が生えている程度だが、少し遠くに行くと珊瑚やイソギンチャクなど、白い砂地が美しい色で飾られていた。
そういう場所には、カラフルな熱帯魚もつきもので、海面から差し込む光の下、珊瑚のビルの間を抜けたり、イソギンチャクのベッドで昼寝を楽しんでいる姿が見られた。

―こんにちは。―

ちゃんと聞こえているようだ。少しびっくりした後、熱帯魚たちはこぞってシーファの周りに集まってきた。
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