海宝堂2〜魔女の館〜
―お昼寝中にごめんね?少し、聞きたいことがあるんだけど…―

そこにいる熱帯魚は誰も妙な壁のことは知らなかった。
皆、ここで生まれてここで育ってきたのだから、それもしょうがない。
でも、やはり少し前に酷い叫び声が聞こえたらしい。イルカや鯨が言っていたのと同じ、怒りに満ちた声だった、と。

普通、イルカや鯨が聞こえる声が熱帯魚に聞こえるとは思えない。哺乳類と魚類の違いからだ。

双方が聞こえる声と言ったら…
自分の声が正にそうだ。
だとすると、聞こえた声は、自分と同族の声。
やっぱり、ナツナ島に魔女の館がある。
この確信を早く伝えようと、海面に向かうがふと、その壁がどんなものか気になった。
今の状態ならきっとすぐにそこまで泳いで行けるだろう。

―また、勝手な行動をして、って怒られるかな?でも…―

自分の好奇心にはやっぱり勝てない。
だから、今、こうして旅に出ているのだから。
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