海宝堂2〜魔女の館〜
話しの内容は、親から子、子供が親になり、またその子供に、と、口伝えで受け継がれてきたもので、俗に言うおとぎ話の類だった。
内容はというと…

昔、大嵐がこの島にやってきた時、1人の漁師が波に飲まれ、大怪我を負ったという。
その漁師を助けたのはとても美しい若い女で、かろうじて意識を保つ中、女は自分の腕に傷を付けたかと思うと、流れる血を漁師の口に運んだ。

何をするんだ、と、漁師は思ったが、その血を飲むと、不思議と体が楽になり、傷を見るとどんどん塞がっていった。
あまりの不思議な出来事にしばらく声も出なかったが、女が「もう安心ね」といい、その場から去ると、慌てて追いかけた。

女が消えた岩の向こうはもう荒れ狂う海で、その波間に漁師が見たのは、およそ魚のものとは思えないほど大きな尾ヒレだった。

それは何か大きな生き物のものだった可能性はあるが、漁師はその後確実に老化が遅くなり、その生涯を閉じたのは100歳を超えた後だったとか。
< 77 / 273 >

この作品をシェア

pagetop